リチウムイオン電池など蓄電デバイスを輸送するための国際ルール
「リチウムイオン電池とハイブリッドスーパーキャパシタの安全性」では、両デバイスの安全上の特徴についてご紹介しましたが、世界中でリチウムイオン二次電池(以下、リチウムイオン電池)が使われている今日、製品の安全性の確保はもとより、これらを安全に輸送するための仕組み作りも欠かせません。特にリチウムイオン電池などの蓄電デバイスは発熱や発火の可能性もあり国際ルール上でも危険物に分類されるため、輸出入など国際輸送する際には注意が必要です。
今回はこれらを国際輸送するに当って定められているルールについてご紹介します。
リチウムイオン電池を運ぶための国際ルール
世の中には様々な危険物が存在しますが、これらの危険物を国際輸送するためのルールの中で最も上位にあるのが、国連(UN)の「危険物輸送に関する勧告」(以下「国連勧告」)です。航空輸送、海上輸送に関わる各国の輸送規制は全て、この国連勧告に基づいて定められており、その影響力は極めて広範に渡ります。従って、ここでは国連勧告についてご紹介します。
国連勧告では、危険物ごとに国連番号を定めています。例えばリチウムイオン電池はUN3480という国連番号で定められた危険物に該当します。
すなわち、リチウムイオン電池を国際輸送する際には、危険物UN3480として定められた梱包形態、最大積載量などを守って輸送する必要があります。
一方で国連勧告には特別規定というものも設けられていて、リチウムイオン電池が定められた一定の条件を満たせば、非危険物として輸送してよいことになっています。以下にその条件の例を幾つか挙げてみます。
- 航空輸送時の低圧状態を想定した試験に合格すること。
- 急激な温度変化を想定した試験に合格すること。
- 輸送中の振動・衝撃・衝突を想定した試験に合格すること。
- 外部短絡を想定した試験に合格すること。
- 過充電、強制放電を想定した試験に合格すること。
上記のような条件を満たしたリチウムイオン電池については、非危険物として、より緩やかな規制の下で輸送することが許されています。従って、リチウムイオン電池メーカーの多くは特別規定に定められた試験をクリアすることを確認した上で製品を出荷、輸送しています。
ハイブリッドスーパーキャパシタを運ぶための国際ルール
ハイブリッドスーパーキャパシタ(HSC)とは、一般的な電気二重層キャパシタの原理を使いながら負極材料として リチウムイオン吸蔵可能な炭素系材料を使い、そこにリチウムイオンを添加することでエネルギー密度を向上させたキャパシタです。
ハイブリッドスーパーキャパシタは高出力、長寿命、高い安全性などの特徴を持ちますが、この
新しい蓄電デバイスが次第に世の中に認知されていくにつれ、それを安全に扱い、輸送するためのルール整備をハイブリッドスーパーキャパシタメーカー各社協力の下進めようとの機運が高まってきました。
そして2009年、ハイブリッドスーパーキャパシタの国連番号取得へのチャレンジが始まりました。
国連番号を取得するためには、国連の専門委員会に提案して、3年間ほどかけて審議に諮りながら承認を受けるというプロセスを経る必要があります。ハイブリッドスーパーキャパシタメーカー各社で合意したハイブリッドスーパーキャパシタの輸送規制のポイントは以下の2点です。
- ハイブリッドスーパーキャパシタの持つ危険性について十分配慮され安全に輸送ができる規則となっていること。
- 過剰な規制措置を廃し経済的に輸送できる規則となっていること。
既に運用されているリチウムイオン電池や電気二重層キャパシタ(EDLC)の輸送規制を参考にしながら、安全性と経済性のバランスのとれた規制を目指して取組みを進めました。
国連の専門委員会の場においては、リチウムイオンキャパシタがリチウムイオン電池に比べて安全性の高いデバイスであることを説明し、各国委員の納得を得ることで、より緩やかな輸送規制に仕上げることができました。
こうして、2015年1月から、国連番号UN3508に基づくハイブリッドスーパーキャパシタ輸送が開始されました。特別規定の主な要件は以下の通りです。
- 航空輸送時の低圧状態を想定した試験に合格すること。
- 1.2m落下試験に合格すること。
リチウムイオン電池の特別規定に定められた条件よりも随分と簡略化されていることがお判りかと思います。これは、ハイブリッドスーパーキャパシタメーカー各社の尽力により、ハイブリッドスーパーキャパシタの相対的な安全性が、国連という国際機関で一定の理解を得られた、ということを示してると言えます。
蓄電デバイスの輸送ルールまとめ
いかがだったでしょうか?リチウムイオン電池とハイブリッドスーパーキャパシタを安全に運ぶための国際ルールと、それが設定された背景についてご紹介しました。
現在、弊社では本日ご紹介したハイブリッドスーパーキャパシタの開発・製造を行なっておりますが、開発された新製品は必ずこの特別規定に定められた試験をクリアすることを確認し、非危険物として国際輸送されたものを各国ユーザーの手元にお届けしています。
ハイブリッドスーパーキャパシタについてご興味のある方、ご質問のある方はお問い合わせフォームからご連絡ください。
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